古代より受け継がれる神葬祭

古代からの葬儀は神道の儀式により、日本本来のものでした。
日本書紀や古事記の記述、古墳などをみても、その当時の葬儀は仏式ではなく、日本民族固有の習わしにより執り行われていたことが示されています。
古い時代の人々は、故人があたかも生きているかのように、御饌(食べ物)や御衣(服)をお供えしてまつり、各家が、自分たちの一族の年長者などを長として、先祖の「みたま」を大切におまつりし、たたえ崇めてまいりました。

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密やか且つ厳かに執り行われるお葬式。

神式では、神社では葬儀をすることはありません。
必ず自宅や斎場などの他の施設を利用します。

神道では正しく明るく生きることが大切であるということが強く表面化されており、 初宮や七五三、厄払いなど、神様への報告や今後の幸福、祝福の為に祭りを行うイメージが強く、現に、死に関することは不浄であり、穢れであるとされているため、神様がいらっしゃる神社では葬儀を行いません。

しかし神道でいう「穢れ」とは、「不潔・不浄」だけを意味するものではありません。 肉親の死による悲しみ、それによって、ハツラツとした生命力が減退している状態、それこそが「気枯れ」=「けがれ」であるといわれています。

仏式は故人を極楽浄土に送るための葬儀ですが、神葬祭は故人の御霊をその家にとどめて、家の守護神となってもらうための儀式です。

死を送る神葬祭は、人生における悲しみであり、不幸であることに間違いはありません。
ですが、死という不幸・悲しみを神葬祭で、更に年々折々の御霊祭によって浄化することも神道にあっては大切なまつりです。
亡くなられたお方も、やがて浄化され祖神としてまつられ、霊神となり子孫を日々守ってくれる存在となることでしょう。

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神葬祭の流れ

葬儀の前に

葬儀の流れ

葬儀の流れ

葬儀の流れ

葬儀の前に
~ご自宅で執り行われる前に~

1)末期(まつご)の水
医師が臨終の宣告をされましたら枕辺の方が瞼をそっと撫でおろし、目を閉じさせ、最後の水を含ませます。
水は生命の最も大切な支えであることから、もしも命が続けば今一度甦って下さいという願いを込めて、故人の血縁の深い者から一人ずつ順に新しい筆か割箸に脱脂綿を白糸で結びつけたもので、あらかじめ用意した茶碗の水を含ませ、唇をしめらせます。

2)故人の衣装と寝かせ方
木綿または麻の白衣を着せ、男性は髭を剃り、女性は薄化粧をほどこして、頭を北に、仰向けに枕なしで新しい布団(薄物)に寝かせ、顔には白い布をかけます。
手は胸の上で組ませて掛け布団は上下を逆に通気性のある軽いものをかけ、遺体を温めないように心掛けることが大切です。
部屋の都合でどうしても北向きにできない場合は、西向きでも良いといわれています。

3)枕飾り
遺体の安置が済みましたら、枕元、又は胸の近くに魔除けの守り刀を顔に刀を向けないように置きます。
昔は短刀や脇差しでしたが、今ではナイフを家庭にある刃物で代用します。
枕元には真白な屏風か、天地を逆さにした逆さ屏風を立て(なければ無理に固守しなくても良い)、その内側に枕を置き、白い布をかけ、洗米、塩、水を供え、燈明をともして消えないようにします。

4)帰幽奉告
神棚に何某が死去したことの由を奉告すると共に、扉をしめ、神棚前面に白紙(半紙)を貼り、覆い隠します。
この他、きらびやかな飾りや額も片付けますが、取り外しのできない額などには、同じように白い紙を貼ります。
尚、病気平癒などを祈願した神社があれば二人一組(血縁の無い方が行います)で代参をするか、遙拝をして祈願をし、帰幽の奉告をします。

5)神棚封じ
雲形の前に白い紙を貼ります。雲形がない場合は、宮形の屋根の先か扉の上部に貼ります。

神葬祭の流れ

1.遷霊祭(移霊祭)

仮通夜
死亡当日の~…出来ないことを確認し、納棺となります。
燈明を絶やさないのは、肉体より離れた霊が、どこか知らないところに行ってしまわないよう、肉体から遠く離れないように、との意味が込められています。

納棺の義
棺の底に白い布団か白木綿を敷き、遺族、近親者の手で、遺体をそっと納め、寝かせてあげます。棺の中には、故人が生前愛用したものや、好きだったものを一緒に入れます。しかし、火葬の時燃えにくいものや、遺体(遺骨)を汚すおそれのあるものは、入れないようにしなければなりません。
遺体を納めたらなば、棺にふたをのせ、白い布でつつみ、本通夜を行う部屋にうつし、台上に安置します。と同時に、シメ縄を張り、禍神(まがつかみ…わざわいをもたらす神)の侵入を防ぎます。
まくら飾りの守り刀は、棺の上の、頭の位置にあたるところに、柄を奥に刃先を外側に向けて置き、祭具をととのえて、神職による納棺の祭詞が奉上されます。

本通夜
古くは、仮通夜、納棺の儀などにも、神職が立ち会いましたが、現在では、仮通夜を病院などで済ませる事が多くなり、納棺が終わって、祭具一式が整った時点より、神職が立ち会うようになりました。葬儀社によっては、お供え物の盛り付け、玉串などのシデ類を用意しない場合がありますので、葬儀社及び神職との打ち合わせは十分に行いましょう。
式次第については、神職への依頼内容や地方、神社の慣例等により相違がありますので、順序と注意事項を確認しておきましょう。

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式次第

(1)祓詞(はらいことば)奏上、ご遺体を始め、お供え物や祭具類、更に奉仕員、会葬者を祓い清めます。

(2)ご遺体のそばに留まっておられる御霊に対し、遷霊のための祭詞が奏上されます。

(3)御霊を霊璽にお写しするため、神職は、「御霊写しの詞」を微音で、真心を込めて唱えます。この時、祭壇に光が届く範囲の全ての明かりを消しますので、事前に担当を決めておきましょう。

(4)死に至られた経過及び遺族の気持ちを伝え、故人の徳を慕うと共に、霊璽に移られた御霊に、今後とも、遺族を見守ってもらいたい旨の、祭詞が奏上されます。

(5)玉串奉奠、順序は、まず喪主、近親者、縁故者と続き、最後に斎主(祭員があるときは列拝)にて終わりますが、斎主が初めに行う場合もあります。
一般会葬者は、別の案(玉串を供える台)を用意し、拝礼を行います。

(6)斎主は、一般会葬者に玉串を手渡す係の祭員を残し、退席します。この後、神職が控室で着替えをすませましたら、出来るだけ故人の事を知っている近親者、または通夜の客と一緒に、お清めの宴を囲んで頂きます。

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2.葬場祭

式次第

(1)手水の儀

(2)伶人並びに参列員、会葬者が着席

(3)斎主・副斎主・祭員が着席

(4)喪主・家族・親族が着席

(5)修祓の儀

(6)斎主が一拝します(諸員はこれに倣います)

(7)副斎主以下が御饌を供えます

(8)副斎主以下が幣帛を供えます

(9)斎主が祭詞を奉上します

(10)誄歌を奏します(伶人奉仕)

(11)喪主が玉串を奉って拝礼

(12)家族、親族が玉串を奉って拝礼

(13)参列者、会葬者が玉串を奉って拝礼

(14)斎主が玉串を奉って拝礼(副斎主以下)

(15)副斎主以下が幣帛、御饌を徹します

(16)斎主一拝(諸員はこれに倣います)

式の進行と席順

先ず、一同手水にて、手と口を清めてから着席します。
席順は、祭壇に向かって、右側の中央寄りから喪主、遺族、近親者が座り、向かって左側の中央寄りから、葬儀委員長、故人の友人、知人の順で着席し、玉串奉奠もこの順となります。
しかし、このような席がとれない時は、最前列中央に喪主が座り、右側に遺族、近親者とつづき、左側に葬儀委員長以下の順に着席するとよいでしょう。
尚、ここで注意しなければならないのは、神職(斎主及び祭員)は、僧侶のように、いきなり祭壇の前に着席しないので、祭壇と参列者の間の右側(部屋の関係及び祭員の人数により、左右にわかれることがある)に着席し、式次第に従って中央祭壇の前に進みます。
開式の辞には、斎主、祭員が入場、着席してから、世話人が簡単に開始の挨拶をします。

出棺祭

葬送することを柩前に報告する、出棺祭が行われます。
式の後に出棺となりますが、柩を霊柩車に乗せるまでの間に、故人と最後の対面をします。
対面が終わると、柩のふたを閉め、喪主から順に、故人とつながりの深かった人から、柩の頭にあたる方から足の方に向かって、小石で三度ずつ釘の頭を打ちます。
出棺の時の挨拶は、親族代表が行います。

3.後祓いの儀

出棺の後、家に残っている遺族、その他の人たちは祭具類の片付けが残った後で、家の内外の清掃をし、神職がお清めの祓いをします。
家の外回りは勿論、部屋ごとに祓い清め、祭壇を簡単なものに改め日々の拝礼が出来るような飾り付けが行われ、霊璽又は遺影を安置する場所が作られます。

4.火葬祭と埋葬祭

主から順に、玉串を奉奠して拝礼を行い、これが終わってから、柩を窯の中に納めます。
略式で行う際は、柩前で神職が祭詞を奏上するのに続いて、喪主が玉串を代表で奉奠し、全員が合わせて拝礼を行った後、柩をかまの中に納めます。
骨上げが終わると、遺骨を墓所まで移し、その日のうちに埋葬します。当日中に埋葬が出来ない場合は、やむを得ず、一度遺骨を自宅に持ち帰り、後日改めて埋葬祭を行います。

5.帰家祭

火葬場または墓所から戻りましたら、門口で、神職による祓いをうけたのち家に入り、事前に準備されたところに、遺影を安置します。
続いて、一同着席し、神職により葬儀が滞りなく終了したことを霊前に奉告する祭詞が奏上され、玉串の奉奠による礼拝が済み、一同簡単な会食をとります。

○葬儀での拝礼
二拝二拍手一拝の作法は、葬儀では拍手の際に音をできるだけたてないようにして両手を打ちます。これを「忍び手」といいます。

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御霊祭・霊前祭

十日祭、二十日祭、三十日祭、四十日祭、五十日祭、百日祭、一年祭と続きます。
仏式でいう初七日が十日祭、四十九日が五十日祭に当たります。

なお、一年祭以降は、三年祭、五年祭、十年祭と続き、以降五年毎に御霊祭を行います。
三年祭は仏式でいうなら三回忌に当たるものですが、仏式の三回忌は死んだときを一回目と数えて一周忌の翌年に行われますが、三年祭は実際に死んだ年から三年目(以下五年祭・十年祭とも同様)となるため、注意が必要です。

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神葬祭に関するQ&A

先祖代々お寺にお墓があるが神葬祭を希望。
先祖代々の宗旨、宗派に限らず自分だけが別の宗教で葬儀することは可能です。 その際はご親族間でお話し合いの上、宗旨・宗派を問わない、または神式の霊園・墓所を探す必要があります。当社で霊園のご案内が可能ですので、お気軽にご相談ください。
神道では、戒名にあたる 死後の名前はあるの?
神道の場合、「諡名(おくりな)」「諡号(しごう)」と言われる名前がつけられます。戒名のように氏名とは違う異なる名前がつけられることもありますが、多くは氏名の下に「之霊」「命(みこと)」「命霊(みことのれい)」「霊位」をつけるだけの場合がほとんど。また、男性は「大人命(うしのみこと)」女性は「刀自命(とじのみこと)」などをつけることもあります。
不祝儀袋の表書きの書き方を教えて下さい。
水引は黒と白の結び切りで、蓮の花の入っていないものを使用し、表書きは「御霊前・御神前・御玉串料」などと記入します。 (御香典と書くのは仏式です)
神道では喪に服する期間はどのくらい必要ですか?
全国9万の神社を統括する神社本庁の「服忌規定」では、次のように定めています。
①父母・夫・妻・子の場合は10日(7歳未満の時は5日)。
②祖父母・孫・兄弟姉妹の場合は5日。
③曽祖父母・曽孫・甥姪・叔父叔母の場合は1日。
④高祖父母・玄孫・兄弟姉妹の孫・従兄弟姉妹・従曽祖父母の場合は1日。
⑤配偶者の親族の場合は、上記の規定を一項目ずつ下げた日数。
⑥遠方で訃報に接した場合は、受けた日から残りの日数だけ服す。
⑦時期が過ぎてしまった場合は当日だけ服す。
神道でもお盆や彼岸の墓参はありますか?
あります。お盆・彼岸は仏教行事としての呼び名ですが、信仰習俗としては仏教が入る前から行われていたものです。なお、お墓や墓参そのものにも、地域により考え方や方式の違う場合があります。
法事にあたるものを神葬祭では何と呼び、また実際にはどのように行っていますか?
年祭・霊祭と呼びます。十日祭~五十日祭、百日祭、一年祭~五年祭、十年祭、二十年祭、三十年祭、五十年祭、百年祭などを行います。なお霊璽(れいじ)は五十日祭の後の忌明けに祖霊舎に納めます。これは仏葬の四十九日に相当し、一つの区切りとなるものです。また地域によっても異なりますが、ほぼ3年たつと「神上がり」と言って、ご先祖様・神様になったとするのが一般的です。
霊祭(毎十日祭・年祭など)は命日に合わせるべきですか?それともお通夜の日に合わせた方がいいでしょうか。
亡くなった日が基準となりますが、事情があれば神職に説明して助言を得るとよいでしょう。
神道に永代供養はありますか?
遺徳を偲ぶという気持ちで年祭や慰霊祭を行いますが、供養という考えはありません。それは特定の期間が過ぎると先祖になり、後に残された人びとを見守って繁栄させ幸せをもたらすと考えるためです。
神葬墓地は必要ですか?
地元の神葬祭を行う神社に問い合わせるとよいでしょう。とくに神葬墓地にこだわる必要はありません。宗旨を問わない墓地であれば神葬祭はできます。
神葬墓地への改葬は他の墓地の場合と異なりますか?
神職が関与する点を除けば大きな違いはありません。
神葬墓地のお参りは時期や方法で他と違うところがありますか?
時期は違うことはありませんが、お供えには生前の好物を差し上げます。ただしお線香は用いず榊を手向けます。お花は上げても構いません。
神葬祭では数珠はいらないのですか?
拝礼の仕方が異なるので数珠は用いません。
神葬祭にお焼香はないのですか?
ありません。葬儀の流れからすれば玉串拝礼が仏式の焼香に当たりますが、亡くなった方の魂を拝むもので手向けの意味はありません。
神葬祭で葬儀を行いたいのですが、宗旨・宗派が異なる場合はどうしたらいいでしょう。
葬儀・埋葬・霊祭(供養に当たるもの)の方式や考え方が違います。神葬祭を行う神社へ行き、神職に相談するとよいでしょう。
現住所と埋葬地が離れており、両者で葬儀などの方式が違います。この場合は納骨はどうしたらよいのでしょう。
宗旨を問わない墓地であれば問題はありません。改葬をも念頭に置き、実際に年祭を依頼する神職に相談するとよいでしょう。
身内の者がなくなった場合、神葬祭ではまず第一に何をすればよいのでしょうか。
神棚の扉を閉じ前面に白紙を貼ります。産土神社または崇敬神社(神葬祭を依頼する予定の神社)にその旨報告します。そして故人が氏子・崇敬者から抜けた旨を、神職から神様に申し上げる「帰幽奉告」を行っていただくことから始めます。
忌中に神棚の扉を閉じたり、これに白紙を貼るのは何故ですか?
死の穢れを憚(はばか)るためです。奈良・平安の昔から、死穢(しえ…死のけがれ)に触れたものは、神に近づいてはいけない決まりで、神棚に白紙を貼るのは、神のいらっしゃるところと穢れてしまった生活空間とを区切るためのものです。
神道では霊魂をどのように考えますか?
魂は不滅で遺族の近く(たとえば家の中など)にいて人びとを守ると考えます。残された人びとが幸せであるようにと見守り、その家が栄えるように支援してくれると信じてきたことによります。
葬式ではなぜ<逆事>を行うのですか?
縁起担ぎ(御幣担ぎ)の類ですが、本来は完全に肉体から離れてしまった死者の魂が、人界に戻れないようにするのだとの俗信もあります。「火葬場から帰る時に同じ道を通ってはいけない」というのも同様の考えにでたものでしょう。
神葬祭では祭壇に花ばかりではなく榊も捧げられますが、何の意味があるのですか?
榊は本来神をまつる際に神霊をお遷しする場合に用います。そこで神葬祭でも、神霊とゆかりの深い榊を捧げ、手向けとします。なお榊以外では花輪・生花・菓子・果物が一般的ですが、地方によっては五穀や野菜を捧げることもあります。
神道には<無縁仏>はありますか?
先祖の仲間入りをしているので無縁仏になることはありません。まつる者が絶えぬよう心掛けています。
祖霊舎を移したいのですが。
家の中で部屋を変更する場合と、屋内から外の祖霊舎に移す場合(逆の場合もあるでしょう)とでは大きく異なります。方位や日取りも気に掛かるでしょうから神葬祭を行う神社で神職に相談してみてください。

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